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京大数学 2012年度 理系第4問

整数

問題

(1) 32が無理数であることを証明せよ。
(2) P(x)は有理数を係数とするxの多項式で, P(32)=0を満たしているとする。このときP(x) x^3 – 2 で割り切れることを証明せよ。

発想

(1)は, \sqrt{2} が無理数であることの証明を参考にする。

(2)は, 多項式の割り算なので, P(x) = (x^3 – 2)Q(x) + ax^2 + bx + c とおき, a = b = c = 0 を示す, という方針を立てるまでは一本道。

下書き

(1)

\sqrt{2} が無理数であることの証明を確認しておく。

有理数だと仮定すると, \sqrt{2} = \frac{q}{p} ( p, q 互いに素な自然数1)とおける。
よって, 2p^2 = q^2 …①となるが, 左辺が 2 の倍数なので, q^2 2 の倍数である。
したがって, q 2 の倍数であるから, 改めて q = 2q’ ( q’ は自然数)とおくと, ①は, p^2 = 2q’^2 となる。同様の議論で, p 2 の倍数となるが, これは p, q が互いに素ということに矛盾する。

これと同様にやれば(1)は終了。

(2)

P(x) x^3 – 2 で割ったときの商を Q(x) , 余りを ax^2 + bx + c とすると, P(x) = (x^3 – 2)Q(x) + ax^2 + bx + c と置ける。

すると, P(\sqrt[3]{2}) = 0 より, a(\sqrt[3]{2})^2 + b\sqrt[3]{2} + c = 0 となる。割り切れることの証明なので, a = b = c = 0 を示すことが目標。

式をよく見ると, (\sqrt[3]{2})^2 も無理数だろうから, 「 a,b,c が有理数で, X,Y が無理数のとき, a + bX + cY = 0 ならば a = b = c = 0 」…②と同じ構造をしている。
これは, もしかしたら当たり前だと思うかもしれない。

しかし, 証明が過去にも出題されており, そもそも無理数 X,Y の値によっては成り立たない。

参照 1999年度 理系第5問

ここでポイントは, 「 a,b が有理数で, X が無理数のとき, a + bX = 0 ならば a = b = 0 」…③はすぐに示せることである。
背理法的に, もし a \neq 0 であれば X = -\frac{a}{b} と変形できるが, 左辺は無理数, 右辺は有理数となり矛盾。よって, a = 0 で, したがって b 0 だから③は成り立つ。

②と③の違いは, 無理数が一つか二つかの違いである。よって, 無理数を一つにまとめてしまえば, 証明が簡単にできる。
ただし今回は 3 乗根なので, 移行して 3 乗するだけでは根号(無理数)が二つ残ってしまう。慎重に考えて式変形を行う。

まず, a(\sqrt[3]{2})^2 + b\sqrt[3]{2} + c = 0 …④の式がある。
この式だけでは, 根号を一つにできないので, 例えば \sqrt[3]{2} を両辺に掛けると, (\sqrt[3]{2})^3 = 2 が使えて, 2a + b(\sqrt[3]{2})^2 + c\sqrt[3]{2} = 0 …⑤となる。
④⑤で, \sqrt[3]{2} (\sqrt[3]{2})^2 の連立方程式みたいになったので, 消去できるはずである。
どちらでもよいが, ややこしそうな (\sqrt[3]{2})^2 の方を消去してみると, (\color{red}{ac – b^2})\sqrt[3]{2} = \color{red}{bc – 2a^2} となる2

これで無理数が一つになったので, 上と同様に, \color{red}{ac – b^2} = \color{red}{bc – 2a^2} = 0 が言える。

あとはここから a = b = c = 0 を言えばよいだけ。

すぐに示すのは難しいが, 手を動かしていると, ac = b^2 bc = 2a^2 を返々割ると綺麗になることに気づく。 c は消えて, a,b も, \frac{b}{a} だけで表せる, いわゆる斉次式の形になる。よって, この式変形が正しそう。

辺々割るには, 分母 \neq 0 が必要で, 割った式を整理すると, \sqrt[3]{2} = \frac{b}{a} となる。
しかしこれは左辺が無理数, 右辺が有理数となるので, 矛盾が生じ, 辺々割ったところ, つまり分母 \neq 0 としたところが間違っていたことが分かる。
このようにして, a = b = c = 0 が言える。

解答例

(1)

\sqrt[3]{2} が有理数だと仮定すると, 互いに素な自然数 p, q を用いて, \sqrt[3]{2} = \frac{q}{p} とおける。
3 乗して分母を払うと, 2p^3 = q^3 …①となる。
左辺は 2 の倍数なので, 右辺の q^3 2 の倍数である。したがって, q 2 の倍数である。
自然数 q’ を用いて q = 2q’ と改めておくと, ①は p^3 = 4q’^3 となる。
右辺は 2 の倍数なので, 左辺の p^3 2 の倍数である。したがって, p 2 の倍数である。
しかしこれは, p, q が互いに素であるということに矛盾する。
よって, \sqrt[3]{2} は無理数である。

(2)

P(x) x^3 – 2 で割ったときの商を Q(x) , 余りを ax^2 + bx + c とすると, P(x) = (x^3 – 2)Q(x) + ax^2 + bx + c と置ける。
ここで, P(x) は有理数係数より, a,b,c は全て有理数である。

すると, P(\sqrt[3]{2}) = 0 より, a(\sqrt[3]{2})^2 + b\sqrt[3]{2} + c = 0 …②となる。
②の両辺に \sqrt[3]{2} を掛けて, 2a + b(\sqrt[3]{2})^2 + c\sqrt[3]{2} = 0 …③

②③より (\sqrt[3]{2})^2 を消去して整理すると, (ac – b^2)\sqrt[3]{2} = bc – 2a^2 …④

ac – b^2 \neq 0 とすると, (ac – b^2)\sqrt[3]{2} = bc – 2a^2 \sqrt[3]{2} = \frac{bc – 2a^2}{ac – b^2} と変形できるが, これは, (1)より左辺が無理数, a,b,c は全て有理数より右辺が有理数となり, 矛盾。
よって, ac – b^2 = 0 …⑤であり, (ac – b^2)\sqrt[3]{2} = bc – 2a^2 に代入すると, bc – 2a^2 = 0 …⑥

ここで, もし b^2 \neq 0 かつ ac \neq 0 ならば, ⑤: ac = b^2 と⑥: bc = 2a^2 を辺々割り, \frac{2a^2}{b^2} = \frac{b}{a} となる。整理すると, \sqrt[3]{2} = \frac{b}{a} となるが, (1)より左辺が無理数, 右辺が有理数となり, 矛盾。
よって, b^2 = 0 または ac = 0 である。

(i) b^2 = 0 すなわち b = 0 のとき, bc – 2a^2 = 0 より, a = 0
このとき 2a + b(\sqrt[3]{2})^2 + c\sqrt[3]{2} = 0 は, c\sqrt[3]{2} = 0 となるので, c = 0

(ii) ac = 0 すなわち a = 0 または c = 0 のとき,
(ii-i) a = 0 のとき, ac – b^2 = 0 より, b = 0
このとき 2a + b(\sqrt[3]{2})^2 + c\sqrt[3]{2} = 0 は, c\sqrt[3]{2} = 0 となるので, c = 0
(ii-ii) c = 0 のとき, ac – b^2 = 0 より b = 0 , bc – 2a^2 = 0 より a = 0

よって, a = b = c = 0 となるので, P(x) x^3 – 2 で割り切れる。

振り返り

(1)は落としてはいけない。

(2)はやり方はわかっても, 式変形が難しい。本番では最後まで出来なくてもしょうがないが, よくあるテーマなので, 時間をかければできるようにしておくべき。

  1. 普通は p, q を整数と置くが, \sqrt{2} が正であることは自明なので, p, q はどちらも自然数と置くことができる。そうすることで, 分母が 0 になる心配もしなくてよくなる。 ↩︎
  2. \sqrt[3]{2} の性質を(1)で調べたので, (\sqrt[3]{2})^2 よりも詳しい情報を知っていることになる。文字消去は性質のわからないものから消去するのが原則だから, 今回は (\sqrt[3]{2})^2 の方を消去する, と論理的に考えることもできる。 ↩︎

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