京大化学 2004年度 第1問

理論化学

問題

 次の文を読んで, 問1~問5に答えよ。

 気体発生装置を用いて発生させた物質量\( N[\rm{mol}] \)の気体\( \rm{A} \)を図1に示すようにびんの中に捕集したのち, ホースを水槽から抜いた。その後, 温度\( T[\rm{K}] \)に保ち, びんを動かすことなく十分な時間保持すると, ビンの中には新たに気体\( \require{mhchem} \ce{A2} \)が生成し, 次の平衡が達成された。

$$ \ce{A + A <-> A2} \tag{1} $$

 このとき, びんの中の気体部分の体積は\( V[\rm{L}] \), 圧力は\( P[\rm{atm}] \)であった。(図2)

 次に, 同じ温度\( T[\rm{K}] \)で, 反応(1)の平衡が達成されている状態を保ちながら, びんをゆっくりと押し下げてびんの中の水面と水槽の水面を一致させた。(図3)

 ただし, びんの中での水の気液平衡は常に成り立っているものとする。気体\( \ce{A} \), \( \ce{A2} \)はともに水に溶けず, 水蒸気, 気体\( \ce{A} \), \( \ce{A2} \)はすべて理想気体と考えてよい。また, 大気圧を\( P_0[\rm{atm}] \), 温度\( T[\rm{K}] \)での水蒸気圧を\( P_W[\rm{atm}] \), 水の密度を\( d_W[\rm{g/cm^3}] \), 気体定数を\( R[\rm{atm \cdot L / (K \cdot mol)}] \)とする。

図1
図2
図3

問1 図2におけるびんの中の水面と水槽の水面との差\( h[\rm{cm}] \)を, 水銀の密度\( d[\rm{g/cm^3}] \)および本文中の記号(\( N, T, V, P, P_0, P_W, d_W, R \))のうちで適切なものを用いて表せ。ただし, \( 1 \rm{atm} = 760 \rm{mmHg} \)とする。

問2 下線部①において, びんの中にある気体\( \rm{A} \)の物質量\( N_1[\rm{mol}] \)を, 本文中の記号のうちで適切なものを用いて表せ。

問3 下線部①において, 反応(1)の平衡定数\( K[1/(\rm{mol/L})] \)を, \( N, N_1, V \)を用いて表せ。

問4 温度が一定ならば平衡定数\( K \)が一定であるとして, 下線部②において, びんの中の水面と水槽の水面を一致させたとき, びんの中にある気体\( \rm{A} \)の物質量\( N_2[\rm{mol}] \)を, \( K \)および本文中の記号のうちで適切なものを用いて表せ。

問5 \( N_1 \)と\( N_2 \)の関係について適切なものを, 次の(ア)~(ウ)のうちから1つ選べ。
(ア) \( N_1 > N_2 \)
(イ) \( N_1 = N_2 \)
(ウ) \( N_1 < N_2 \)

解説

問1

水銀柱を使った圧力の換算を今一度確認しておく。以下の図のように, 水銀柱の\( 760\rm{mm} \)分の圧力が, 基準の圧力(\( 1\rm{atm} \))となる。水銀の重さは水の約\( 14 \)倍であるから, 水柱に置き換えると, 水銀の場合よりもたくさんの水が必要で, 対応する水柱の高さが約\( 14 \)倍になる。本問では, 水と水銀の密度が与えられているので, 約\( 14 \)倍のところが\( \frac{d}{d_W} \)倍となる。

あとはただの比例計算で,

$$ 水の76 \times \frac{d}{d_W}[\rm{cm}]分の圧力 : 水のh[\rm{cm}]分の圧力 = 1[\rm{atm}] : ?[\rm{atm}] $$

より, 水の\( h[\rm{cm}] \)分の圧力に対応する\( [\rm{atm}] \)が求められる(\( \frac{hd_W}{76d}[\rm{atm}] \))。

この換算が出来れば, 水面での圧力のつり合いの式を立てて終了。

図より, \( P_0 = P + \color{red}{\frac{hd_W}{76d}} \)。

問2

まず, 物質量の変化を追うことができる。

ここで, 水蒸気圧が与えらえれているので, 水蒸気圧を考慮しなければならない。下線部①の平衡時にびんの中の圧力が\( P \)なので, この圧力は, 水蒸気圧, 気体\( \ce{A} \)の分圧, 気体\( \ce{A2} \)の分圧の合計である。

\( P = P_W + \color{red}{P_A + P_{A_2}} \)

状態方程式は, 混合気体\( \ce{A} \) + \( \ce{A2} \)について立てる。

\( (\color{red}{P – P_W})V = \frac{1}{2}(N+N_1)RT \)

問3

省略。

問4

実際には「初期状態→下線部①→下線部②」のように変化したが, \( \rm{mol} \)の変化を追う際は, 下線部①を経由しなくても, 「初期状態→下線部②」と考えても同じである。よって以下のように, \( N_1 \)を使わずに直接変化の表が書ける。

問2と同様に, 水蒸気圧に注意して等式を立てると, 以下のようになる。

再び混合気体\( \ce{A} \) + \( \ce{A2} \)について状態方程式を立てると,

\( (\color{red}{P_0 – P_W})V’ = \frac{1}{2}(N+N_2)RT \)

より\( V’ \)が求まるので, 平衡定数の式に代入して終了。

問5

問2と問4の答えを比較してもよいが, 式の形が異なるので追加で式変形が必要となり, 非常に煩雑になる。ここでは定性的に答えを出すことが求められている。

びんを押し込むと, 中の気体の体積は減る(頭の中で想像してみるとほぼ明らか)。よって, 体積が増える方向に平衡が移動する。

振り返り

全体を通じて水蒸気圧の扱いに注意が必要。また, 問1の単位の換算から間違える人も一定数いる。気体の扱いに慣れている人とそうでない人で, 大きく差が付いたと思われる。

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