問題
\( n \)を\( 4 \)以上の自然数とする。数\( 2, 12, 1331 \)がすべて\( n \)進数で表記されているとして,
$$ 2^{12} = 1331 $$
が成り立っている。このとき\( n \)はいくつか。十進法で答えよ。
発想
与式は, \( 2^{n+2} = n^3 + 3n^2 + 3n + 1 = (n+1)^3 \)と変形でき, \( n \)が大きいと\( 2^{n+2} \)が急速に大きくなる, 典型的なパターン。よって, 小さい\( n \)で成り立つものを求めて, それ以上では\( 2^{n+1} > (n+1)^3 \)を示せばよい。
下書き
実験
\( n \)進数の記法について確認しておく。
・\( 10 \)進数\( 1234 \)は, \( 1 \times 10^3 + 2 \times 10^2 + 3 \times 10^1 + 4 \times 10^0 \)
・\( 2 \)進数\( 1010 \)は, \( 1 \times 2^3 + 0 \times 2^2 + 1 \times 2^1 + 0 \times 2^0 \)
・\( n \)進数\( 1331 \)は, \( 1 \times n^3 + 3 \times n^2 + 3 \times n^1 + 1 \times n^0 \)
よって与式は\( 2^{n+2} = n^3 + 3n^2 + 3n + 1 = (n+1)^3 \)となる。
小さい\( n \)で実験すると, 以下のようになる。
\( n \) | \( 4 \) | \( 5 \) | \( 6 \) | \( 7 \) | \( 8 \) | \( \cdots \) |
\( 2^{n+2} \) | \( 64 \) | \( 128 \) | \( 256 \) | \( 512 \) | \( 1024 \) | \( \cdots \) |
\( (n+1)^3 \) | \( 125 \) | \( 216 \) | \( 343 \) | \( 512 \) | \( 729 \) | \( \cdots \) |
(注)左辺が\( 2 \)の累乗の形なので, 等式が成り立つには\( n+1 \)が\( 2 \)の累乗でないといけない。よって, 等式が成り立つ\( n \)を見つけるだけなら, \( n+1 = 4, 8, 16, \cdots \)となる場合を調べればよい。
表より, 「\( n \geqq 8 \)では\( 2^{n+2} > (n+1)^3 \)」となりそうなので, それを示して終了。
\( 2^{n+2} > (n+1)^3 \)を示す
指数関数と多項式の不等式は典型的な形であり, 数学的帰納法で示す方法だけ理解しておけばよい。
(参考:1979年文系第5問)
(i) \( n = 8 \)のとき, 表より成り立つ。
(ii) \( n = k (k=8, 9, \cdots) \)のときに成り立つと仮定すると, \( \color{red}{2^{k+2} > (k+1)^3} \)。
この仮定を用いて, \( 2^{k+3} > (k+2)^3 \)を示す。
\( (左辺) – (右辺) = 2^{k+3} – (k+2)^3 = 2 \cdot 2^{k+2} – (k+2)^3 \)
ここで, 仮定より,
\( 2 \cdot \color{red}{2^{k+2}} – (k+2)^3 \color{red}{>} 2 \cdot \color{red}{(k+1)^3} – (k+2)^3 = k^3 – 6k -6 \)
あとは\( k^3 – 6k -6 > 0 \)が言えたら, (ii)が成り立って万事解決。これは, さっきと違って指数関数が入っていないただの多項式なので, 微分で示すのが簡単。
\( k^3 – 6k -6 > 0 \)を示す。
\( f(k) = k^3 – 6k -6 \)とおく。\( k \geqq 8 \)のとき,
\( f'(k) = 3k^2 – 6 = 3(k + \sqrt{3})(k – \sqrt{3}) > 0(\because k \geqq 8) \)
よって, \( k \geqq 8 \)のとき, \( f(k) \geqq f(8) = 8^3 – 6 \cdot 8 – 6 > 0 \)
なお, 解答例では, 微分を使わず式変形だけで済ませた。天啓が下りてきた場合はそれでよいが, 普通は思いつかないので, 素直に微分でやればよい。
解答例
\( n \)進数表記の\( 2^{12} = 1331 \)を\( 10 \)進数に直すと, \( 2^{n+2} = n^3 + 3n^2 + 3n + 1 \)
すなわち, \( 2^{n+2} = (n+1)^3 \cdots ① \)となる。
\( n = 4 \)のとき, \( 2^{4+2} = 64 \), \( (4+1)^3 = 125 \)より, \( 2^{n+2} = (n+1)^3 \)①は成り立たない。
\( n = 5 \)のとき, \( 2^{5+2} = 128 \), \( (5+1)^3 = 216 \)より, \( 2^{n+2} = (n+1)^3 \)①は成り立たない。
\( n = 6 \)のとき, \( 2^{6+2} = 256\), \( (6+1)^3 = 343 \)より, \( 2^{n+2} = (n+1)^3 \)①は成り立たない。
\( n = 7 \)のとき, \( 2^{7+2} = 512 \), \( (7+1)^3 = 512 \)より, \( 2^{n+2} = (n+1)^3 \)①は成り立たつ。
\( n = 8, 9, \cdots \)のとき, \( 2^{n+2} > (n+1)^3 \cdots ② \)が成り立つことを, 数学的帰納法で示す。
(i) \( n = 8 \)のとき, \( 2^{8+2} = 1024, (8+1)^3 = 729 \)より, \( 2^{n+2} > (n+1)^3 \)②が成り立つ。
(ii) \( n = k (k = 8, 9, \cdots) \)のとき, \( 2^{n+2} > (n+1)^3 \)②が成り立つ, つまり, \( \color{red}{2^{k+2} > (k+1)^3} \)と仮定する。このとき,
$$\begin{eqnarray}
2^{k+3} – (k+2)^3 &=& 2 \cdot \color{red}{2^{k+2}} – (k+2)^3 \\
&\color{red}{>}& 2 \cdot \color{red}{(k+1)^3} – (k+2)^3 \\
&=& k^3 – 6k \color{blue}{- 6} \\
&\color{blue}{\geqq}& k^3 – 6k \color{blue}{- 2k} (\because \color{blue}{k \geqq 3}) \\
&=& k^2(k-8) \\
&\geqq& 0 (\because k \geqq 8)
\end{eqnarray}$$
よって, この仮定の下で, \( 2^{k+3} > (k+2)^3 \)が成り立つ。
(i), (ii)より, \( n = 8, 9, \cdots \)のとき, \( 2^{n+2} > (n+1)^3 \)②が成り立つ。
以上より, 求める\( n \)は, 十進法で\( 7 \)である。
振り返り
与式を変形できたら, あとは非常によくある流れなので, 是非完答したい問題。過去問対策をしっかりとやっている人には難しくないはず。
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